中国のキャッシュレス化は極めて進んでおり、中国人民銀行によると、普及率は86%に達しています。主な決済手段はQRコード決済で、アリペイ(中国名:支付宝)やWeChat Pay(中国名:微信支付)が市場シェアの94%を占めています。
財布を持ち歩かない生活が当たり前になりつつありますが、現金を受け取らないことは法律違反であるものの、実際にはお釣りの準備がなかったり、現金払いを嫌がられたりすることがあります。地下鉄に乗る際には、両替が必要な場合もあります。

支付宝や微信支付でQRコード決済を利用するには、中国国内の銀行口座と連携させる必要があります。そのため、中国国内に銀行口座がない出張者や旅行者は利用できない状況でした。出張者は現地の社員に付き添ってもらう必要があり、行動に支障を来すケースも見られ、政府も改善を促す指示を出していました。
しかし、2023年7月21日から支付宝や微信支付は、日本を含む海外発行の国際クレジットカードと直接連携できるようになりました。以下に、海外発行クレジットカードの登録手順を説明します。
微信支付(WeChat Pay)の登録手順
- 微信アプリのダウンロード:iOSのApp StoreまたはAndroidのGoogle Playから微信アプリをダウンロードします。
- アカウント登録:使用可能な国際電話番号でアカウントを登録します。SMS認証が必要な場合があります。
- 微信支付の有効化:
- 微信のホーム画面で「Me」→「Settings」→「General」→「Tools」→「Weixin Pay」を順にタップします。
- ウォレット機能を有効にするため、指示に従って操作します。
- 国際クレジットカードの登録:
- 微信支付のウォレット画面で「Bank Cards」→「Add a Bank Card」をタップします。
- パスポート情報をアップロードし、国際クレジットカード情報を入力します。この手続きには時間がかかるため、渡航前に済ませておきましょう。
- 支払い方法:
- 店舗でQRコードをスキャンして支払いを確定します。
- または、支払いコードを表示して店員にスキャンしてもらいます。

支付宝(アリペイ)の登録手順
- 支付宝アプリのダウンロード:iOSまたはAndroidのアプリストアから支付宝アプリをダウンロードします。
- アカウント登録と実名認証:
- アプリを開き、国際電話番号を使用してアカウントを登録します。
- 画面右下の「Account」から「Settings」→「Account and Security」を選択し、指示に従って実名認証を完了します。
- クレジットカードの追加:
- 画面右下の「Account」から「Bank Cards」をタップします。
- パスポート情報と国際クレジットカード情報を入力してカードを登録します。
- 支払い方法:
- 店舗でQRコードを「Scan」するか、支払いコードを表示して店員にスキャンしてもらいます。
- 「Pay/Receive」から支払いコードを表示し、店舗のバーコードリーダーでスキャンします。

使用上の注意点
- 取引上限と手数料:
- 微信支付や支付宝で国際クレジットカードを使用する場合、一日の取引上限額は通常3,000元(約60,000円)程度です。
- 支払い金額が200元(約4,000円)を超えると、通常3%の手数料が発生しますが、それ以下の小額支払いは手数料が免除されます。
- 地域的な利用制限:
- 香港では、海外クレジットカードと連携した支付宝や微信支付が利用できない場合があります。香港専用の支付宝香港や微信支付(「Me」→「Services」→右上の…から「Swith Wallet Region」→「Hong Kong, China」を選ぶ。が、若干複雑なので推奨しない)を使用するか、普通にクレジットカードを利用しましょう。中国(大陸)側に比べると、そこまでQRコード決済が浸透していません。
- 個人間送金:
- 個人間送金が一般化していますが、クレジットカードを使用した個人間送金はできません。例えば、レストランでの支払いは可能ですが、割り勘のために友人に送金することはできません。
- 支付宝と微信支付の使い分け:
- 多くの店舗でどちらも利用できますが、微信支付はチャットアプリ微信内で使用できるため、より手軽です。支付宝は基本的に決済専用のアプリという印象がありますが、外国人が利用できないサービスが少ないため、出張者や旅行者には支付宝の方が使いやすいかもしれません。
- 決済以外の利便性:
- 支付宝や微信支付はスーパーアプリと呼ばれ、決済以外にもアプリ内でショッピング、タクシーの配車予約、地下鉄乗車などのミニプログラムが使用できます。これらの機能もクレジットカードと連携することで利用可能です。
まとめ
支付宝と微信支付は、中国での日常生活に欠かせない存在です。現金の利用が少ない中国社会では、QRコード決済ができない外国人にとって滞在が不便になりがちで、それが「もう中国に来たくない」と感じる要因の一つとなっていました。今後は、支付宝や微信支付を有効活用することで、中国での滞在がより快適になるでしょう。